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2010年11月30日 (火)

骨格のお話

実は、らんちゅうの骨格標本は公表されているんです。

『金魚と錦鯉 鑑賞と飼い方』 松井佳一著 昭和43年発行

やはり松井博士です。掲載されてはいますが、この写真は使いまわしで、初出は『科学と趣味から見た金魚の研究』なんですね。ですから撮影されたのは昭和初期にまで遡ることになります。よって現在のらんちゅうとは改良の程度が違うことを十分に考慮して、それを差し引いて見るべきと思っています。

それでもらんちゅうの骨格標本まで作製している松井博士の偉大な功績は、誰一人として今まで注目してこなかったことに悲しむべきでありますし、こんな所にも金魚学の停滞ぶりが露呈していると言えるのではないでしょうか。

もう一つ付け加えると、フィッシュマガジン誌において、井上外喜夫氏(石川更紗らんちゅう愛好会会長)がご自分で撮影されたX線画像が掲載されていたことも付記しておきます。発表時においては、詳細な分析はされていなかったように記憶しております。興味のある方は調べてみてください。(※ふんぺいはどこにしまったか判らないです(^_^;))

Photo

写真(上)をご覧ください。らんちゅう(上)と比較対照としてリュウキン(下)の骨格標本ですね。頭骨から尾に向けて一本通っているのが脊椎骨です。『峰って何』でコメントしていた“神経棘(しんけいきょく)”が脊椎骨の上部に立っている棘(とげ)を言います。

どんならんちゅうでも脊椎骨の上に神経棘がある

というのが見てとれます。この部分を肉と表皮が覆いかぶさっているということですね。

で、ですね。我々の究極の目標は、骨格から見て、背が低くて平坦にするために、“脊椎骨を背中上部に移動させて、なおかつ神経棘を無くすこと”なのだと思うのです。背鰭を無くしたように。

程度の差こそあれ、どんならんちゅうでも神経棘に由来する“峰”はあるはずで、それをどう隠しているかは肉の付き具合の大小と癖になるのではないかと思うのです。

さらに、ここではご紹介出来ないのですが、もう一つ資料があります。『らんちゅうの骨格図※』で、解剖して骨格を詳細に写し取ったものなのですが、近年のものなので、神経棘が癒着しだしているのが判ります。つまり、改良の結果、全般的に神経棘は無くなる方向に少なくともベクトルが向いているということです。
※『鑑賞魚解剖図鑑』 落合明 鈴木克美 編著 緑書房

因みに上の写真のらんちゅうは、櫛型で背出しが高く、背下りがなく、かなり体高があるのが想像できますね。(^_^;) さらに下のリュウキンと比較すると体長が違うのですが、脊椎骨の一つの長さが長手と短手になっていることが理解出来ると思います。

次に下の写真をご覧ください。ここで判ることを少し書いておきます。

頭骨と脊椎骨の位置関係を見ることが出来るのですが、かろうじて背出し部分に第一肋骨?が残っていますね。本当は体半分ぐらいまで残っていないといけないのですが、標本作製時に無くなったのでしょう。(※骨格標本作りはかなり難しい)

この写真では、体幅と頭骨の幅がイコールだということが判りますね。頭骨の幅以上にあるのは脂肪が付いてしまったものであるので差し引いて見ないといけない意味が判ると思います。

さて以上で骨格かららんちゅうを肉付けして生体を想像してみてください。頭の中に出来ましたか? 次にその逆をやってみてください。今ご自分が飼育している個体を頭の中で骨格標本にしてみてください。

これが“骨格から見るらんちゅう学”の初歩なんです。いかがでしょう?

もう一つ、余談ですが、『金魚百華第二号』ピーシーズに深堀氏という金魚絵師が特集されています。表紙に氏の書かれたらんちゅう??が掲載されています。氏が書かれた金魚は大変艶めかしく流麗で魅力的なのですが、このらんちゅう、まさに馬の背なんです。(^_^;)ん~かなり痩せて見えるんです。決して氏の作風を批判しているのではないんですよ、是非活躍して頂きたいのですが、表現されたらんちゅうが、イメージとして氏の頭に定着したものか、それを幻想的に表現されただけなのか、意図は私には判りません。興味のある方はご覧になってみてください。

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コメント

実際、背の抑えた神経棘って短いのでしょうね。背びれがない時点で大なり小なり脊椎骨は写真のように反ってるはずですからね。幅を見せてるのは肉の可能性が高いんだ~胴の見方勘違いしていました。骨格ね^ー^

投稿: sukai | 2010年12月 1日 (水) 20時21分

sukaiさん、おはようございます。

背を抑えた個体の神経棘が短いかどうかは、実際のところ判らないんです。背を低く見せているだけであって、肉で平坦に見せているとも考えられるんです。

それを証明するには解剖して骨格図を作成するか、もしくはX線でどのようになっているかをいちいち検証してみないと、想像の域を出ません。

ですから全てが仮説なんです。

因みにふんぺいは、X線用に冷凍保存している個体を3体用意しています。(^_^;)いつになることやら・・・

当歳で背が低く幅を見せている個体ももしかしたら“見せている”だけかも?という疑問は絶えず忘れてはならないと思います。

どのように変化するかは、傾向はあったとしても魚に聞いてみないと判らないんじゃないでしょうか。

投稿: ふんぺい | 2010年12月 2日 (木) 06時33分

もともと神経棘を覆っている肉の厚みがどのくらいかなんて見えませんもんね。 胴を判断するのが一番難しそうです。

投稿: sukai | 2010年12月 2日 (木) 13時13分

自分もこの本をたまたま図書館で借りていたんですが、大阪らんちゅうも標本が欲しいなぁと思いました。


X線撮影したいと思ってるんですが、なかなか・・・。

投稿: 背番号8 | 2010年12月 2日 (木) 19時29分

sukaiさん、おはようございます。

胴の判断はベテランでも難しいと思います。今ここに書かれていることも多分初出が大半なので意識して愛好家の方は見てないはずです。さらに胴の見かたは、私も整理して書いている段階なので間違いもあるのでは?と内心ヒヤヒヤしてますよ。(^_^;)

背番号8さん、おはようございます。
透明標本という手もありますよ。ネットで探せば作成してくださる方がいらっしゃいます。一体一万円ぐらいだったかな?

投稿: ふんぺい | 2010年12月 3日 (金) 05時51分

 遅レスで申し訳ありません。私は以前から金魚、特にらんちゅう、琉金の骨格に興味があっていろいろ試行錯誤しています。
 透明標本の場合、金魚は必要以上に脂肪がついているので、かなり厄介なようです。レントゲンでは当歳では骨化度が悪くよく写りませんでした。生きている魚では動いてしまう、また大きい魚では設備の問題もあってなかなか苦戦しています。
 深堀氏の絵の魚については氏もよく言及しています。決して現実の魚ではなく、自分のイメージの世界の魚、いえ人間の化身である、と擁護しておきます。
 

投稿: 花やん | 2010年12月26日 (日) 18時21分

花やんさん、ご無沙汰しております。

花やんさんとこはレントゲン撮り放題の環境でしたね!(^_^;)

なるほど!透明標本は自分では出来ないのでいずれどこかの時点でやってみますね。

深堀さん、先日、日テレの「行列のできる法律相談所」に取り上げられてましたね。あれだけ話題になったら創作活動がしやすくなりますね!

あの絵以外にもらんちゅうを書かれていますのでイメージとしての魚だと私も思っていますよ。ただ“馬の背”または、人間の背中にとしての表現で背骨の位置などが判りやすいですね。それで言及しました。

私も深堀さんの作品は一つ家に飾っておきたいなって思いますよ~

投稿: ふんぺい | 2010年12月27日 (月) 10時14分

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